
美しい太陽が段々海に向かって沈んでいった。残念ながら海に近いところには雲がたちこめており、太陽が海に沈むところは見られなかったが、太陽が沈むにつれ、太陽の光がだんだんオレンジを帯びたような色になっていき、ナザレの町と白い砂浜を染めていくその光景はとても美しかった。

私もみーちゃんも離れて座って、それぞれ夕日をだまって楽しんだ。こんな美しくて神聖な景色に、言葉はいらないのかもしれない。考えてみたら、私は日本でこのような静かな満ち足りた時間を過ごすことはほとんどないのかもしれない。日々、色々なことに追われ時間は矢のように過ぎていく。人生を噛みしめるように楽しむことを味わった貴重な時間であった。

さて、太陽も沈むと、いっそう寒さが増してきた。海から吹き付ける風は寒かった。夕日も見たので、またケーブルカーに乗ってプライア地区に帰ることにした。帰りのケーブルカーもまた同じ運転手のお姉さんだった。乗客はやはり、数人しかいない。学校帰りのような子どもが乗っていたりした。ケーブルカーはやはり地元の人の足なのであろう。
無事にケーブルカーに乗ってプライア地区まで戻った。ケーブルカーを降りたところから、少し町中に入っていったあたりをぶらぶらした。お店やレストランが集まった少し賑やかなところもあったが、やはり営業していないお店も多い。入りたいレストランもなかったので、また海岸通りのレプブリカ通りまで出た。
ペンションに戻るのに、レプブリカ通りではなく、その横に平行に走っている砂浜に下りて歩いて戻った。少し歩いたところで、遠くから呼ぶ声がした。そちらを見るとジョゼフが満面の笑顔で私たちに近づいてくるではないか!!お店から砂浜までは少し離れている。よく私たちに気づいたなーと感心してしまった。
ジョゼフは、私たちが昼間戻ってこなかったことを恨みがましく言うでもなく、また楽しそうにおしゃべりを始めた。ジョゼフは五ヶ国語話せるらしい。このような観光地で働くには、その能力が必要なのだと言う。いやはや、素晴らしいことだ。それに引き換え私たちといったら・・・。外国に行くと、よくジョゼフのような人に出会う。このような人に出会うといつも「自分も英語をがんばろう!!」と決意するのだが、その決意も日本に帰ると空しく忘れ去られ、月日は過ぎていくのであった。
ジョゼフとしばらく話した後(ジョゼフがほとんど話していたが)、一度ペンションに帰ることにした。ジョゼフも「そうだよ、荷物を置いてゆっくりしたあとまた出ておいで」と笑顔で私たちを見送ってくれた。「じゃまた後で!!」とポルトガル語で挨拶し、お別れした。もちろんジョゼフはあとで自分のレストランにおいで、と言っていたが強引に勧誘することもないジョゼフは、とても素朴でいい人であった。
この頃には、もう大分暗くなっていた。私たちも一日の観光の疲れと寒さで早くペンションに行って休みたくなっていた。ペンションの前まで来ると、昼間私たちをバスターミナルから客引きで勧誘してきたおばさんがいた。私たちを見つけると、とても嬉しそうな笑顔で挨拶してきてくれた。とてもかわいくて愛嬌のあるおばさんだ。なんだか心が温かくなるような笑顔だ。ナザレの人たちは、どうしてみんなこんなに温かい人たちなのだろうか。来たばかりのナザレに、早くも愛着がわいてきたのであった。
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