そのカフェは、パステイス・デ・ベレンと言って、“パステイス・デ・ナタ”というポルトガルの伝統菓子で有名な老舗のお店なのだ。パステイス・デ・ナタというのは、数年前日本でも流行った、あのエッグタルトのことである。今思えば、なぜ日本でポルトガルのお菓子であるエッグタルトが流行ったのだろう。お菓子を流行らせる仕掛け人というのが陰にいるのだろうが、面白いと思う。このパステイス・デ・ベレンのエッグタルトは、ポルトガルで一番おいしいと言う。甘いもの好きの私にとって、これは絶対に外せないところであった。

でも、外は雨が降っていて寒いので、どうしてもあきらめきれず、お店の中に入ってみてあいている席を探してみた。混雑しているお店の中で、店員さんが奥の方を指差し、あっちに行けと言っている。でも、そちらにはトイレのマークしか見当たらない。
でも、行けというので行ってみたら、なんとそこから廊下が奥の方にどんどん続いていて、トイレを通り過ぎ、また新たに部屋があるのであった。しかも、その部屋も人でいっぱいで席がない。でも驚くべきことに、さらにそこからありの巣のように、次から次へと部屋が続いていて、しまいにはパーティーでもできそうなかなり大きな部屋に行き着いたのだった。

まったく、外から見た感じでは、とてもこんなに大きな建物だとは思えない。くねくねと部屋から部屋へと歩いてきたので、いったいこの建物はどんな形をしているのだろう、と不思議になるような構造だった。さすがに大きな部屋の席は、半分くらいしか埋まっていなかったので、そこに無事に座ることができた。でも、座ってみてあらためて周りを見渡して気づいたのだが、なんと一番奥にはカーテンがかかったところがあり、そこを開くとまださらに奥に部屋がつづいているのだ!
案の定、その後もどんどんお客さんが増え続け、途中でそのカーテンも開けられ、そちらにもお客さんが入れられていったのだった。まったくすごいお店だ。ポルトガル人も観光客もみんなこのお店にくるのだろう。ここでは、ほとんどの人がビッカ(エスプレッソ)とエッグタルトを注文している。私たちもビッカとエッグタルト(みーちゃんは1つ、私は2つ)を注文した。ウエイターのおじさんは、優しくてとても感じのいい人だ。

エッグタルトは、噂通り、とてもおいしいものだった。焼き立てで、アツアツ。外側の生地はパリパリで、中のクリームはとても濃厚でずっしり重みがあるほどたっぷり入っている。テーブルの上にはシナモンパウダーと粉砂糖の入れ物があり、好みでふりかけて食べるらしい。私たちはシナモンパウダーをかけて食べてみた。シナモンの香りが、また違ったおいしさを出してくれるような気がした。
エッグタルトはそれほど大きいものではないが、濃厚なクリームたっぷりなのでかなりボリュームがある。私は2つも食べたのでおなかいっぱいになってしまった。甘くて濃厚な味わいのエッグタルトに、苦いがさっぱりしているビッカがとても合っている。
エッグタルトは一つ0.75ユーロ、ビッカは1杯0.55ユーロ。有名店なのに、やはり日本にくらべると、とても安く感じる。もし可能なら甘党の夫に、お土産に沢山買って帰りたかった。
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